| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-343
生態系機能に影響の大きい生態遷移の構造は複雑で、動植物を包括的に研究することでその過程を知る手掛かりとなるだろう。しかし、生物が完全に淘汰された後の1次遷移系列に伴う地表徘徊性甲虫群集に関して、長い時間スケールでの変化を評価する研究は全く行われていない。 富士山では最新の噴火から300年以上経過しており、遷移初期から極相に至る植生が存在する。そこで本研究では、富士山南東斜面の遷移系列上の異なる段階にある植物群落において地表徘徊性甲虫種の分布を明らかにすることで、植物の遷移に伴う甲虫群集の遷移との関係を明らかにすることを目的とした。
調査地として、1)遷移初期の群落としての火山荒原、2)途中相の森林、3)極相の森林と3段階の遷移系列上の地点を選定した。小スケールでの遷移と地表徘徊性甲虫の関係をあきらかにするため、火山荒原上に面積の異なる20のイタドリパッチを選定した。途中相、極相にもそれぞれ5プロットを設置した。地表徘徊性甲虫はピットフォールトラップにより採集した。また、植生群落及び甲虫群集はTWINSPANを用い分類した。
イタドリパッチ、途中相、極相を比較した結果、甲虫類はそれぞれ異なる亜科が優占していた。イタドリパッチではゴミムシダマシ亜科が、途中相ではオサムシ亜科が、極相ではナガゴミムシ亜科が優占と変化していた。植生組成から20パッチは3グループに分類され、イタドリ1種優占グープ、複数優占グループ、木本を含む多数優占グループとなった。甲虫群集も、3グループに分類された。また相関解析より、甲虫の種数は草本種数より木本種数との相関が高かった。初期遷移において、パッチ面積と木本種の侵入が大きな影響を与えていることが明らかになった。