| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-001

放牧に伴う植物の種多様性と飼料価値の変動 -シミュレーションによる推定-

吉原佑*,岡田美弥(東北大・農)

我が国の放牧畜産は、昭和30年以降、各地に放牧地が造成され、家畜・食糧生産の場所として利用されてきた。ところが近年では、畜産物生産形態の集約化や輸入作物の増加等に伴う放牧の衰退の結果、放牧地の荒廃の進行などの問題が起こっている。草地には、多面的な機能が備わっていることが知られている。極相が森林である我が国は、放牧利用をされることで牧草地は草地として維持される。放牧により維持された牧草地は、生態系サービスの供給の場としても機能するものと考えられる。我が国の放牧草地の多くは、生産量の向上を目的とした人工(改良)草地である。野草地の生産力は人工草地には及ばないものの、各種資材やエネルギーの投入量が極めて低く、環境への負荷が小さいため、近年、生態系の持続的管理の観点から評価されている。これまで、草地の中で放牧草地は特に生産の場としての認識が強かったため、その多面的な機能の評価が十分に行われてこなかった。そこで本研究では、持続的で、かつ安定した生態系サービスを供給することのできる放牧技術の構築に向け、3つの放牧生態系(牧草区、野草区、牧草・野草混合区)で生産性と生態系サービスの供給性、持続性を評価を行う。本年度は放牧による植物の種多様性と飼料価値への影響の予測を行った。

ウシによる活動の中でも、グレイジングは特に植物の種構成を大きく変化させるものである。また、日本の草地のように地形の起伏が大きく、降雨量が多い地域ではウシの蹄等により裸地が発生しやすい。さらに、草地内にはウシの選択採食等により不食過繁地のように攪乱を受けていない場所も存在する。そのため、放牧草地を二次元空間として捉えた場合、グレイジングを受けたパッチ、裸地、攪乱を受けていないパッチに大別される。よって、これら3つの空間割合を変化させることで(空間ベースによるシミュレーション)、放牧による植物の種多様性への影響予測を行った。


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