| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-002
アカネズミ(Apodemus speciosus)の個体数及び遺伝的多様性に寄与する餌条件、カバー条件等は、生息地の植生に大きく左右されると考えられる。本研究では、植生ごとにアカネズミの個体数変動及びミトコンドリアDNA D-loop領域のDNA多型の検出を行い、捕獲個体数及び遺伝的多様性が高い植生を検討した。調査期間は2004年5月〜2009年3月、調査地は中部大学研修センター(岐阜県恵那市武並町;北緯35度25分、東経137度21分、標高340m、総面積40万平方メートル)内の植生を代表する草地区、ヒノキ人工林区、落葉広葉樹二次林区とした。各区内には12×12mのコドラートを3面ずつ設置し、捕獲はシャーマントラップを用いて記号放逐法で毎月1回3連夜で行った。
全区で合計26ハプロタイプ(141個体)が確認され、調査期間中、全区でハプロタイプ数及び捕獲個体数共に増加傾向にあった。また、調査期間中の合計は、落葉広葉樹二次林区(20ハプロタイプ、71個体)、ヒノキ人工林区(17ハプロタイプ、38個体)、草地区(15ハプロタイプ、51個体)となり、捕獲個体数とハプロタイプ数の間には正の相関(rs=0.78、p<0.05)が認められた。このことから、捕獲個体数の多い植生ほどハプロタイプ数も高くなる傾向が示された。雌雄別にみると、2004年度を除く全ての調査期間を通して落葉広葉樹二次林区で雄の捕獲個体数及びハプロタイプ数が多かった。しかし、草地区、ヒノキ人工林区では、雌雄間で捕獲個体数及びハプロタイプ数共に差は認められなかった。また、ハプロタイプによる植生の選好性も認められなかった。以上より、捕獲個体数及び遺伝的多様性共に落葉広葉樹二次林区で多くなった。