| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-004
日本に生息するアジア型マイマイガの北米大陸への侵入を防ぐ措置としてアメリカ・カナダ両国政府は,2009年現在,広島を含む我が国の10港をハイリスク港に指定している。成虫発生時期にハイリスク港を経由した船舶が両国の港に入る場合,日本国内で不在証明書を取得しておくか,アメリカまたはカナダの当局機関による入港前の沖合検査を義務付けられており,貿易上の障害となっている。港湾周辺の本種の密度が閾値を越えるとハイリスク港に指定されるため,指定解除に向けては港湾周辺の本種密度を低下させる必要がある。マイマイガは広範囲の樹種を餌とすることから,港湾周辺に多く分布する緑化樹も餌として利用していることが考えられる。緑化と本種の発生抑制を両立させるためには,マイマイガ幼虫の餌として適しているかどうかに基づいて植栽樹種を選ぶことが求められている。そこで本研究では,広島県南部で採取した卵塊由来の幼虫に,広島港周辺に多く分布していた緑化樹を中心に選んだ15種の葉を与えて,生存率を比較した。1齢期間中に全幼虫が死亡した樹種は,クロマツ,ソメイヨシノ,キョウチクトウ,ナンキンハゼ,カイヅカイブキ,ヤマモモ(旧年葉のみ),コジイ,センダンであった。一方,成虫まで達した樹種は,ニセアカシア,ヤマモモ(当年葉のみ),ケヤキ,コナラ,ポプラであった。このことから,樹種により本種の餌としての適合性には大きな違いがあることが示された。また,ソメイヨシノは一般的には本種の餌として不適な樹種と考えられていないことから,本種の地域個体群間で各樹種の餌としての適合性に違いがあることが示唆された。