| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-006

アブラムシが誘導するダイズの母性効果が次世代の実生上のアブラムシのコロニー成長に影響する

*片山昇, Alessandro Oliveira Silva, 大串隆之(京大・生態研セ)

ある種の植物では、植食者に食害された場合、生産する子(種子or実生)の質や防衛レベルを変化させることが知られている。このような母性効果は、世代を超えた表現型可塑性であり、次世代の植物上での植食者の個体群動態に影響しうる。

アブラムシの食害は、植物体内のサリチル酸濃度の変化を引き起こすことで、葉の窒素濃度やフェノール含有量の変化をもたらすことが知られている。このようなアブラムシが誘導する反応は、種子体内の化学成分の変化を介して、次世代の実生の質を変えるかもしれない。前年にアブラムシ密度を三段階(0、低、高)に変化させて栽培したダイズから種子を回収し、それらを同一の環境下で発芽させ、実生の葉の形質(トリコーム密度、CN比、およびフェノール含有率)について調べた結果、葉のフェノール含有量(化学防衛の指標)に実生間で違いはみられなかったが、母植物がアブラムシに食害された場合、子の実生では葉のトリコーム密度(物理防衛の指標)や窒素含有率(葉の質の指標)が高かった。またこれらの実生上にアブラムシを10個体ずつ放飼し、2週間後に実生上のアブラムシの個体数を測定したところ、母植物がアブラムシに食害された場合の実生で、アブラムシの個体数が多かった。アブラムシが誘導するこれらの母性効果の生理的メカニズムや、その母性効果がダイズにとって適応的かについて評価するためには、さらに解析する必要があるが、今回の結果は、母植物の食害経験は、次世代の実生上でのアブラムシのコロニー成長に正の効果をもたらすことを示唆している。


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