| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-011

イヌヤマハッカ群(シソ科ヤマハッカ属)の花筒長変異と遺伝的分化

*堂囿いくみ(神戸大・人間発達環境),鈴木和雄(徳島大学)

シソ科ヤマハッカ属のイヌヤマハッカ群は、花筒長の地理的変異が大きく、その変異は送粉者マルハナバチの口吻長と対応がみられる。送粉者である3種のマルハナバチは、口吻の長さと生息する標高が異なっており、マルハナバチ相の違いが、イヌヤマハッカ群の花筒長変異と遺伝的変異に影響していると予想される。本研究では、イヌヤマハッカ群15集団において、花筒の長さを測定し、アロザイム酵素多型解析を行った。

集団間で花筒の長さは有意な違いがみられた。マルハナバチ相に影響する要因(緯度・経度・標高差・花筒長差)を検討するため重回帰分析をおこなった結果、マルハナバチ相を決める要因は標高であった。また、標高は花筒長と強い相関がみらたことから、標高によるマルハナバチ相の違いが花筒長変異に影響を与えていると考えられる。

アロザイム酵素多型解析の結果、集団間の遺伝的分化は有意に高かった(GST = 0.36)。遺伝的分化に影響する要因(集団間の距離、標高差、花冠長差)を検討するため、重回帰分析を行った結果、標高が影響している傾向はみられたが、統計的に十分な支持は得られなかった。イヌヤマハッカ群の形態的・遺伝的分化のメカニズムを明らかにするためには、複数の山地において標高経度に沿って集団を選び、マルハナバチ相・花筒長の変異・遺伝的解析を行う必要がある。


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