| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-012

藻食性巻貝バテイラが褐藻類カジメの生長に与える影響

*吉見仁志(筑波大・下田臨海), 岩瀬嘉之(大日本塗料), 河津直行(河津建設), 土屋泰孝 , 佐藤壽彦 , 品川秀夫 , 青木優和(筑波大・下田臨海)

カジメEcklonia cava はコンブ目に属する大型褐藻である。カジメの主要グレーザーのうち,ウニや藻食魚類の摂食圧はしばしば破壊的であることが知られている.一方で藻食性巻貝類がカジメに与える影響については実証的研究が少ない.カジメ葉上に頻出するバテイラOmphalius pfeifferi pfeifferi は水産資源としても重要な藻食性巻貝である.本研究では,密度制御したバテイラのカジメ摂食量を定量することによって,バテイラがカジメの現存量および生長に与える影響を調べる.

実験は次の 2 つを行った.1)生簀実験:バテイラ 1 個体とカジメ片を入れた容器を水深約3mに垂下し,2 週間ごとにバテイラの成長とカジメの湿重量を記録した.2)野外囲い込み実験:上面が 1 m × 1 m,高さ 0.5 m のコンクリートブロック(河津建設製)の天面を高さ 15 cm,厚さ 5 cm のコンクリート枠で囲い,枠の表面に銅塗料(大日本塗料製シーブルーキング)を塗布した.銅塗料はバテイラの移動を阻害する.これを海底に設置し各ブロックにはカジメを 4 本移植後にバテイラをそれぞれ 0,30,60 個体投入した. 1 週間毎にカジメの生長とバテイラの個体数を記録し、実験開始時と終了時にはカジメ藻体を計量した.また,実験終了時には区画内のクロルフィル定量も行った.

実験の結果から,バテイラの摂食圧がカジメの生長に与える影響は小さいことが示唆された.バテイラはカジメ葉上部表面を薄く削るように摂食しており,高密度区でも実験期間中にカジメの生長点部分を侵すことはなかった.一方で、ブロック上の付着珪藻がバテイラ区で大きく減じていたことから、珪藻類に対する摂食圧も考慮した解析を行っている.


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