| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-013
近年進行中の大気CO2濃度の上昇や窒素沈着量の増加等の生育環境の変化により、樹木の被食防衛能は変化すると予想される。これにより樹木と植食者の相互関係が変化する可能性があり、環境変動による樹木の被食防衛能の変化について明らかにする必要がある。樹木の被食防衛能の1つに、葉内の被食防衛物質(フェノール類など)の生産がある。落葉広葉樹では、被食防衛物質の生産と成長は両者とも光合成産物を利用するためトレードオフの関係にあると考えられ、量的に限られる防御物質を葉内に均一に分布させるのではなく、重要な器官や組織などに局在させて効率よく防御していると考えられる。従来の研究では、化学分析による被食防衛物質の同定と定量を行ってきたが、葉内の被食防衛物質の局在については明らかにされていない。そこで本研究では、高CO2と窒素付加環境で2年間生育させた落葉広葉樹3種(ブナ、ミズナラ、ホオノキ)の葉の被食防衛能について、被食防衛物質の局在の視点からの解明を目指した。その結果、ブナでは高CO2処理により被食防衛物質量が増加、窒素付加により減少し、ミズナラでは高CO2処理により増加したが、両樹種とも環境変動に対応した被食防衛物質の局在部位の変化は見られなかった。ホオノキでは高CO2や窒素処理による被食防衛物質の量や局在への影響は見られなかった。以上より、将来予測される高CO2環境や窒素沈着量の増加により樹木の被食防衛能は変化しうること、その応答は樹種により異なることが示唆されたが、局在パターンは種特有の応答が予想される。