| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-014
ツキノワグマは樹上の果実を食べるために樹木に登り、果実のついた枝を折り一箇所にたぐり寄せながら果実を採食する。その際に樹上にできる枝の塊は「クマ棚」と呼ばれている。クマ棚の形成は、時に林冠の一部を著しく破壊し、小規模のギャップを形成することがある。このことから、ギャップ形成に伴う光環境の改善が樹冠下の植物の生長・開花・結実に影響を与えるとの仮説が成り立つ。本研究では、この仮説を実証するための基礎研究として、クマ棚の分布(尾根・斜面・沢)とツキノワグマによる樹木の選好性を明らかにすることを目的とした。
調査は、2007、2008、2009年の10月〜12月に長野県軽井沢町長倉山国有林で行った。約3km2の落葉広葉樹林を踏査し、クマ棚のある樹木の位置をGPSで測定した。また、それらの樹種・樹高・胸高直径、樹木1個体当たりのクマ棚の個数、林冠内のクマ棚の位置、折られた枝のサイズを計測した。2009年には、10m×50mの調査区を林内に36個設置し、胸高直径15cm以上の樹木を対象に毎木調査を行い、クマ棚の有無を記録した。これらの調査データから、クマ棚を形成する樹木に対する選好性を解析し、ツキノワグマが林冠部のギャップ形成に果たす役割について考察する。