| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-017
アカメガシワはトリコームによる物理的防御や腺点による化学的防御のほかに、花外蜜腺とPearl bodyによりアリを誘引し、植食者を排除させる生物的防御を行う。これまでにアカメガシワは土壌環境や光環境に応じて各防御形質を可塑的に変化させていることを明らかにしてきた。しかし、アカメガシワが生物的条件に応じてどのように防御形質を発達させるのかは明らかになっていない。本研究では、人為的被食処理とアリ随伴が各防御形質の発達におよぼす影響を評価した。花外蜜を利用する生物を排除した温室にアカメガシワのポット苗18株を設置し、10株のすべての葉の50%を切葉した。すべての花外蜜を水で洗い流し、24時間毎に11日間花外蜜の分泌量を測定した。さらに、60株を野外に設置し、30株に同様の被食処理を行い、後に形成された葉の防御形質を調べた。その結果、被食処理によって花外蜜の分泌は7日間誘導された。被食処理後に形成された1枚目と2枚目の葉の花外蜜腺数は対照株より多かったが、腺点密度やトリコーム密度は変化しなかった。オオズアリを除去した温室にアカメガシワのポット苗10株を設置し、5株の対照株では24時間毎に11日間花外蜜分泌量を測定した。5株の処理株ではアリを除去してから5日目にアリを24時間随伴させ、再びアリを除去し、その後24時間毎に6日間花外蜜分泌量を調べた。その結果、アリ随伴は花外蜜分泌を誘導したが、花外蜜分泌量は被食処理により誘導された花外蜜分泌量より有意に少なかった。人為被食とアリ随伴処理により誘導された花外蜜をオオズアリに与え、選好性を調べた結果、被食処理およびアリ随伴により誘導された花外蜜へのアリの選好性に違いはみられなかった。以上の結果から、被食とアリ随伴により花外蜜分泌が誘導され、アカメガシワは生物的条件に応じた効率のよい生物的防御を行っていることが示唆された。