| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-035

食草・イヌガラシの形態に依存したモンシロチョウ属の産卵位置選択と産下卵の運命

*恩田裕太,渡辺 守(筑波大・院・生命環境)

チョウ類の雌は、食草を周囲の植物から見分け、産卵に適した部位を選択している。モンシロチョウやスジグロシロチョウの場合、雌は卵を1個産下するごとに舞い上がって移動するので、そのたびに何度も産卵位置選択が行なわれることになる。このため、卵塊を産下する種に比べて産卵位置選択に伴うコストを小さくする必要性があると考えられた。両種の食草であるイヌガラシの生育期間は春から秋までで、その間、開花と種子生産が連続して行なわれるが、人里植物のためしばしば雑草として刈り取られて地上部を失ってしまう。そのような株は再び芽吹くため、様々な生育段階の株が常に存在することになる。本研究では、冷温帯の路傍や水田の脇に出現していたイヌガラシの株を、渡辺・山口(1993)にしたがって発育段階を6段階に分類した後、最も丈の高い花茎を1本だけ残して分枝した花茎をすべて除去し、自然高と最大、最小幅を測定した。株についていた葉も、形態によって5種類に分類し、大きさを測定して葉序を記録した。発見したモンシロチョウ属の産下卵は、葉上に印を施して日中に3〜5時間間隔で毎日2回、約一週間観察を行なった。両種の卵は、株の大きさにかかわらず、蕾や開花した花を含む花序をもつ3〜5の発育段階の株で多くみられ、ロゼット状の1の株や花序が果実のみとなった6の株では開花していた株に比べて少なかった。産下卵のうち、孵化まで至ったものは約半数で、死亡要因の多くはアリの捕食と思われた。また、クサカゲロウの幼虫による吸汁や卵寄生蜂によって死亡した個体もみられた。1齢幼虫は、卵の付着していた葉に留まって摂食を行なった個体と、1齢幼虫のうちに葉の基部に残った腋芽や花序に移動し、蕾や若い葉を摂食する個体が観察された。これらの結果から、両種の産卵位置に対する選好性と、食草の形態の関係について考察した。


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