| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-121
自然界では生物間の共生は普遍的な現象であり、競争や被食捕食といった相互作用と同様に生態系を理解する上で重要な種間相互作用である。共生関係は宿主にとってネガティブに影響する寄生からポジティブに働く相利共生までさまざまな関係性があるが、その進化的な起源は寄生にあり、次第に相利関係へ至るというシナリオがある。一方で、生物間相互作用はどのような環境下におかれているかに依存して変化する。そのため、アブラムシの二次共生菌やアリによる植物の防衛などのように、相互作用している他種の除去などによって関係性が負から正、正から負へと変わりうる。共生関係の進化においても、この環境依存の変化が進化動態に及ぼす可能性が高い。
本研究では、このように環境依存で関係性が変化しうる状況で、寄生から相利関係へと進化する条件をシミュレーションによって探った。進化ゲームの解析により寄生のネガティブな度合いが下がる進化動態は非常に良く解析されてきた。Yamamura et al. (2004)は2種の生物個体をそれぞれの格子上に置き、両者が同じスケールで進化する動態を追跡し、空間的な分散制約が相利共生の進化を可能にすることを示した。この二重格子モデルを用い、本研究では2種の一方を宿主、他方を寄生という非対称な相互作用、さらに環境依存で相互作用の強さが変わると仮定した。空間構造がなければ、先行研究と同様、相利的な振る舞いをする寄生種は、環境に依存せず、寄生するのみの集団には侵入できないが、空間構造を導入すると侵入可能となる。さらに宿主の生息環境が変化した場合、寄生がどの程度のコスト/ベネフィットバランスであれば共生関係がより維持されやすくなるのかをシミュレーションで探った。この結果から生息環境が相利共生の進化に及ぼす影響を考察する。