| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-124

コンタクトプロセスを用いたクローナル植物における病原菌伝播モデル

*酒井佑槙(北大・環境),高田壮則(北大・環境)

コンタクト・プロセスは、伝染病の伝播を表す簡単なモデルとしてHarris(1974)によって導入され、接触過程や接触感染過程とも呼ばれる。数学的には配置空間に値をとる連続時間上のマルコフ過程に属している。グラフの各頂点に人がいると考えると、健康な人はグラフ上で隣にいる病人の数に比例した感染率で病気に感染すると考える。

クローナル植物は、種子だけではなく、根・茎・葉などの栄養器官から植物を繁殖させる方法で、親株と遺伝的に同じ個体をふやすことが出来る。 しかし、親と同じ形質を引き継ぐことで、親株が病気にかかっている場合、子供も病気に感染しやすくなることが考えられる。よって、クローナル植物では、植物の一部が病気に感染すると、病気が植物全体に広がり、その個体群全体が絶滅する可能性が高くなると考えられる。

本研究では、クローナル植物個体群が二次元格子における格子点に存在すると仮定して、クローナル植物の繁殖過程、病原体の伝播過程をコンタクト・プロセスで表現する。植物は、繁殖率pで隣接する個体(格子点)に繁殖し、死亡率dで死亡するとする。また、植物が空間を占めた後、病原体が空間中に侵入し、病原体の伝播力(感染率)λで伝播する。さらに、感染した植物は死亡率vで死亡するこれらの経過に関して数値シミュレーションにより解析を行う。

シミュレーションの結果から、病原体の伝播速度(タイムステップ/伝播距離)、生存個体の割合(生存個体/初期個体)を求めることで、個体数の変子を時系列で表す。また、病原体による死亡率(毒性)によって決められる分布パターンと植物の繁殖率で変化する病気の伝播力の関係を示したい。


日本生態学会