| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-210
タヌキおよびアナグマは日本の里山に生息する雑食性の中型哺乳類である。本研究では,タヌキおよびアナグマが同所的に生息する地域において,糞DNAからの個体識別法を用いて調査地を利用している個体と分布の特定を行った。
鹿児島県薩摩川内市において,海岸沿いの低地から山地までの165haの範囲を調査地として設定し,2006年11月に網羅的踏査によるフィールドサイン調査を実施した。発見した糞のうち,新鮮な糞のみを採取し,DNAを抽出した。個体識別の結果,タヌキでは19ヶの糞で個体識別に成功し,10個体の生息が確認された。アナグマでは68ヶの糞から30個体を確認し,この調査地ではタヌキよりアナグマのほうが多く生息していることが明らかになった。確認された個体の分布から,タヌキは比較的低地に多く生息しているのに対し,アナグマは山地に多く生息していることが示唆された。この調査地で並行して実施したアナグマの巣穴や餌資源の好適性評価においても,常緑広葉樹の多い山地が高い評価であり,山地における個体数密度の高さはアナグマにとって好適な生息環境を反映していると考えられた。