| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-215

自らの卵捕食がカワバタモロコ個体群動態に及ぼす影響

田中哲夫*(人と自然博),藤田茂宏(北摂オーデイオ),谷本卓弥(伊丹北高),山科ゆみ子(ホトケドジョウを守る会),三浦康弘(藤井寺工高)

驚異的な初期増加に続く個体群の縮小:

干上がった池に雄雌各10個体の絶滅危惧種カワバタモロコを新たに導入しその後の数を追跡した。A池では一年後に5,318個体・二年後に5,703個体に、B池ではそれぞれ4,243個体・10,119個体に、C池ではそれぞれ1,210個体・1,984個体に増加し、新たに放流された池で、カワバタモロコは驚異的な増殖速度を示すことが明らかになっている。ところが、次々年度には、何れの池においても上記のようにその増殖速度は急激に低下し、やがて密度は減少する。

卵捕食自滅・カニバリズム説の検証:

この個体群の縮小要因として、スジエビやメダカなどカワバタモロコの想定卵捕食者の影響、酸欠による卵および仔魚の窒息死など、もろもろの減少要因を検討した。産卵期のカワバタモロコは、極めて高い頻度で多量の自身の卵を捕食していることから、もっとも有力な個体群の減少要因は、他の捕食者ではなくカワバタモロコ自身の卵捕食であることが明らかになりつつある。

自滅を防ぐ構造としての水陸移行帯:

カワバタモロコをはじめとしたコイ科魚類の産卵場所や仔稚魚の生息場所として、湖や池の水陸移行帯が重要視されてきた。この空間は、他の捕食者からの避難場所としての効果を発揮していると信じられてきた。だが主には自身の卵を食い尽くすことが困難な構造を水生植物が提供し、自滅のスピードを遅くしているのではあるまいか。モツゴと共存するケースでの卵捕食の実態、水生植物の種やスジエビなど他の捕食者との絡みの中での卵捕食について検証する。


日本生態学会