| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-216
ニホンジカは,1978年から2003年にかけて分布域が1.7倍に拡大し(環境省自然環境局2004),新たな地域で農林業被害や交通事故,自然植生への影響が顕在化している.これまでエゾシカ個体群の動向把握には,ライトセンサスや狩猟統計の目撃効率を用いた相対密度が有効であることが判っている(Uno et al. 2006).しかし,狩猟未実施地域では狩猟統計が得られず,低密度地域では指標の感度が低いという課題がある.効果的な個体群管理を行うためには,低密度で感度の高い指標の開発が必要である.
そこで本研究では,低密度地域で有効な相対密度指標及び森林植生に及ぼす影響把握手法の確立を目的として,植生指標の調査を行った.調査は,2008年及び2009年6月に北海道の胆振地域(n=10)及び渡島地域(n=10)の落葉広葉樹林内に帯状区(4×50m)を設置し,毎木及び稚樹調査を行い,枝葉(地上高2m以下)及び稚樹の採食痕を記録した.また,各帯状区内に1×1mの方形区を20個設置し,林床植物の被度等を調査した.小径木密度,稚樹密度,ササ現存量,枝葉及び稚樹食痕率とライトセンサスによる密度指標との比較を行った.ライトセンサス指標には,2006〜2008年の3年間の10km走行当りの目撃数の平均値を用いた.その結果,枝葉食痕率及び稚樹食痕率とライトセンサス指標の間に有意な関係があること,これらの植生指標が低密度地域で感度の高い指標であることが明らかとなった.