| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-221

ため池間におけるカワバタモロコの遺伝的背景と形態変異

鈴木規慈*,畠山絵美(三重大院・生資),渡辺勝敏,柿岡 諒(京大院・理),原田泰志(三重大院・生資),前畑政善(琵琶博)

異なる生息環境下に生息する個体群間で,外部形態や生活史特性等に変異が認められることが多くの種で知られている.特に,広域に生息する種の場合には,生息地間における遺伝的な差異が形態変異と関係している場合が知られている.カワバタモロコHemigrammocypris rasborella(コイ科)は西日本に分布する小型淡水魚で,現在主に隔離された山間地域のため池に生息しており,絶滅が危惧されている.本種は生息地の間で生活史特性に変異が認められ,東海地方では生息地間で外部形態の変異も認められている(赤田・淀 2006).しかしながら,それらの変異の遺伝的背景や生息環境との関係については明らかではない.そこで本研究では,滋賀県東部の10箇所のため池に生息する本種の遺伝的,形態的変異を明らかにし,生息環境との関係を検討した.標本の採集は2008年6月に行い,採集個体(雌雄各20個体前後)の左体側面の写真画像により外部形態の測定をおこなった.採集個体の一部について,ミトコンドリアDNA部分塩基配列により,遺伝的多様性と集団構造の解析を行った.本発表では,集団遺伝的な特徴を踏まえ,外部形態の生息環境との対応,そして環境に対する適応の結果としての形態変異の可能性についても議論する.


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