| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-222

モデル生態系における体サイズを考慮した個体群動態:捕食における空間の効果

*中桐斉之(兵庫県立大・環境人間)

地球上には数多くの生物種が存在するが、その体のサイズは様々である。したがって、その捕食においてもその空間サイズが影響を及ぼすと考えられる。近年、格子モデルを用いた個体群動態の研究において、空間効果を取り扱うことが容易になってきた。しかし、個体の捕食する空間領域を考慮したモデルは、今まで取り扱われてこなかった。そこで、捕食の領域の変化を考慮したモデルを構築し、個体の捕食領域がどのように個体群動態へ影響を及ぼしているかについてシミュレーション解析を行った。

モデル生態系として、二次元の格子系を生息地と仮定し、この上で、被食者−捕食者の関係にある2種の生物が、増殖、捕食、死亡のプロセスを繰り返すとする。ここで、捕食のプロセスに関して、捕食者の個体の大きさに応じて、捕食が変化すると仮定し、シミュレーション実験を行った。

捕食者の領域が被食者に与える影響を調べるため、捕食者と被食者の個体群動態を調べた。この際、被食者の体サイズを1に固定し、捕食者の体サイズを変化させていくと、捕食者の体サイズが増大するにつれて、捕食者と被食者の両方の密度が減少することがわかった。また、これは、捕食における空間の効果に影響を受けることがわかった。

さらに、このモデルを変更した、増殖と捕食プロセスの際に空間の位置に依存しないモデルを構築しシミュレーションを行って比較を行った。その結果、捕食者の密度だけが増大していくことがわかった。これは、捕食者の空間サイズが影響していることを示唆している。

捕食による影響を考える際は、死亡率や増殖率だけでなく、捕食者の体サイズも考慮する必要があることを示唆している。


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