| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-223
水田を中心とする淡水生態系ネットワークは、多様な水生生物が利用する複合環境である。その重要な構成要素であるため池は、比較的安定した止水域として、多くの淡水魚類に利用される。
本研究では、岩手県南部に残存する良好な里地里山地域のため池に生息する絶滅危惧魚類の分布に対する局所環境要因および他の生息場所との連結性の影響を検討した。
当該地域の3河川および73のため池において、2007年9月〜2009年9月に調査を行い、魚類の種ごとの在・不在、局所環境要因として、ため池の面積、水草の被度、コイの在・不在を、並びにランドスケープ要因として、ため池と水路の連続性、水路と河川の連続性および水路と河川の合流点の河川次数(河川の連続性)を記録した。絶滅危惧魚類は、ため池からのみ記録された種を「ため池タイプ(シナイモツゴ・メダカ)」、ため池と河川の両方で記録された種を「河川―ため池タイプ(キンブナ・ギバチ)」に分類し、これらグループの在・不在、あるいは在来種数と諸要因との関係を、流域をランダム効果とした一般化線形混合モデルを用いて分析した。
分析の結果、在来種数はため池と水路の連結性と水草の被度によって有意な正の影響を受けていた。「河川―ため池タイプ」に対しては、水路と河川の連結性が有意に正の影響を示し、面積も正の傾向を示した。一方で、「ため池タイプ」は、ため池と水路の連結性と水草の被度が有意な正の影響を示し、水路と河川の連結性は負の傾向を示した。間接効果として検討した、水路と河川の連結性はコイに影響を与えていなかったが、コイは水草の被度に有意な負の影響を与えていた。
本研究では在来淡水魚類にとって水系連結と、局所環境要因である面積や水草の被度の重要性が示された。また、コイの導入が水草の減少を介して在来淡水魚類に負の影響を与えることも示唆された。