| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-242

キイロショウジョウバエにおける発育期間に関する選抜実験とゲノムワイドスクリーニング

*寺村皓平(岡山大・院環境), 岡田泰和(岡山大・異分野融合コア), 高橋一男 (岡山大・異分野融合コア),宮竹貴久(岡山大・院環境)

成虫前期間として定義される発育期間は、幼虫期の栄養条件や、代謝速度だけでなく、概日リズムにも影響されることが示唆されてきた。実際には、キイロショウジョウバエにおいて、時計遺伝子の一つである、periodが発育期間に関与することや、ウリミバエにおいて、発育期間と概日リズムの間に遺伝相関があることが報告されてきた。これは、発育期間に掛る自然選択が、概日リズムの変化を介して交尾行動を行う時刻にも違いが生じ、生殖隔離が起こる可能性を示唆しており、同所的種分化の理解において重要である。しかし他の時計遺伝子が、発育期間に与える影響や、既知の時計遺伝子以外の遺伝子が、発育期間と概日リズムの両方に多面発現的効果を持つ例は、ほとんど知られていない。ゲノムが解読されており、様々な遺伝学的ツールが利用可能なキイロショウジョウバエは、このような問題に取り組むうえで、最適な研究材料である。

本研究では、発育期間と概日リズムの遺伝相関の解明を目的に、キイロショウジョウバエを用いて、人為選抜実験とゲノムワイドスクリーニングを行った。選抜実験では、発育期間に対して、長期化と短期化の方向へ分断化選択を行った。ゲノムワイドスクリーニングでは、約450のDrosDel系統(欠失塩基配列領域を同定した欠失染色体をもつ系統)の発育期間を測定し、対照系統と発育期間が有意に異なる系統を選別した。また、選抜実験により確立された系統と、スクリーニングにより選別された系統について、アクトグラフを用いて、歩行活動周期を測定しており、その進歩状況についても報告したい。


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