| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-244

小規模分断林におけるエゾリス(Sciurus vulgaris orientis)の分布:生息地の面積が重要か質が重要か?

館絢花(北大・環境),齊藤隆(北大・環境)

多くの野生生物が生息地の消失や分断の影響を受けている。個体群の長期存続にとって、生息地の面積と質どちらが重要なのかという問題は、生息地管理にとって重要である。分断化に敏感だとされるキタリス(Sciurus vulgaris)の分断林での分布を予測するモデルが作られてきたが、面積が10 ha以下の分断林ではモデルの予測精度が低かった。そこで本研究では、面積10 ha以下の分断林におけるエゾリス(S. v. orientis)の分布の決定要因を調べることによって、生息地の量と質の相対的な重要性を評価した。生息地の量として分断林の面積、生息地の質として秋冬の餌資源として重要なオニグルミとチョウセンゴヨウに着目した。エゾリスの分布は目視と自動撮影カメラを用いて、エゾリスが主にオニグルミを食べる9月と主にチョウセンゴヨウを食べる10月の計2回調査した。ロジスティック回帰分析とAICによるモデル選択の結果、エゾリスの分布を説明する要因としてオニグルミ、チョウセンゴヨウ、面積がこの順で重要であった。オニグルミは単独でも9月、10月、両月のエゾリスの分布すべてを十分に説明することができ、チョウセンゴヨウは単独だと10月のエゾリスの分布しか説明できなかった。面積は、単独でエゾリスの分布を説明することができなかったものの、チョウセンゴヨウと一緒にモデルに入れると分布を説明することができた。また、最適モデルとして選ばれたのはオニグルミとチョウセンゴヨウを説明変数としたモデルだったが、面積を説明変数として含んだ複数のモデルのAICも最適モデルと同程度に小さかったため、相対的な重要度は低いが、面積もエゾリスの分布を説明するのに貢献していることがわかった。以上より、面積10 ha以下の小規模分断林におけるエゾリスの分布には、生息地の質が生息地の量よりも重要であると結論できた。


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