| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-245

冷温帯のスギ人工林におけるオオヒラタシデムシの個体群動態

*滝 若菜, 渡辺 守(筑波大・院・生命環境)

鳥類や小型哺乳類の死骸が地表に出現するのは偶発的であり、冷温帯地域においてはほとんどが脊椎動物によって利用されてしまうため、その消失も早い。このような時間的・空間的に不安定で短期間出現の資源を利用する無脊椎動物は、その資源を長くても1世代しか利用できないといわれている。

腐肉食性のオオヒラタシデムシは、成虫も幼虫も同じ地表という2次元空間を共有し、腐肉を餌資源として生活している。本研究では、一様な環境であるスギ人工林を調査地とし、本種の幼虫出現時期の7月、8月にそれぞれ7日間ずつ標識再捕獲を行なった。鳥のひき肉を1g入れたベイトトラップを2m間隔で計144個仕掛けて、設置から24時間後にトラップを巡回した。空間分布の解析結果より、成虫は独立して生活し、幼虫は同齢で集合する傾向のあることがわかった。また、Jolly-Seber法により個体群パラメータを算出したところ、本個体群は定住性が高いことが示唆された。実験室内では、野外で捕獲した成虫に、毎日鳥のひき肉1gを与えて飼育し、雌と雄、ペア、幼虫の齢別日当たり摂食量を測定したところ、雌は雄の約2倍近く摂食した。3齢幼虫は1齢幼虫や2齢幼虫の2倍摂食しており、これは雄の摂食量とほぼ同じであった。雌が産卵をするにはペアで日あたり最低0.1g以上の肉を摂食する必要があった。これらの結果から、野外における餌密度を推定するとともに、本種の餌資源利用様式に伴う個体群動態について考察する。


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