| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-250
ツキノワグマによる造林木への樹皮剥ぎ被害は、近年ではその生息地全体にまで広がりを見せ、重要な林業問題となっている。これまで様々な防除方法が開発され試験が行われているが(2000 斎藤など)、どの造林木を守るべきかわからずに悩まれている林業家も多い。ツキノワグマによる樹皮剥ぎに関する研究は多く行われ、広葉樹林に隣接した造林地や尾根(2006 窪田など)、食物資源となる下層植生がない土地などで多く被害が発生するとの報告がある(2001 吉田ら)。また樹皮剥ぎは好んでの採食行動であり(1996 北原ら)、春期に糖度含有量の上がる造林木から狙う(2003 西ら)などの報告がされている。それでも十分に樹皮剥ぎ発生要因が解明されたわけではなく、さらなる研究が必要となっている。
そこで本研究では被害木の空間分布に着目し、被害木分布と周辺の環境条件の関係を解明することを目的とする。そして樹皮剥ぎの被害予測に繋げることを目指す。
調査は宇都宮大学付属船生演習林、第7〜9林班内の被害造林地で行う。ここは栃木県高原山山系のクマ個体群の生息範囲であるが、被害の程度は軽度と思われ、樹皮剥ぎ被害発生初期としての研究に適していると考えられる。
演習林の林班内に4ha(200m×200m)の方形区を設定し、0.25ha(50m×50m)の方形区に分割するし、内部の被害木の毎木調査を行った。また、すべての0.25haの方形区内に100m2の方形区を設け、内部のすべての立木の毎木調査と被害の有無を記録した。
現在までの調査で1つの4ha方形区内で581本の被害木の位置データを得た。また4ha内には約9920本の立木が存在し、被害率は6%となり軽度被害地である。
本発表では、4ha内の被害木をGISに取り込み、植生などの環境データとの関係を考察していく。