| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-251
近年,イノシシによる農作物被害が増大し,深刻な社会問題となっている.特に,中山間地域においては,イノシシによる農作物被害が原因で離農する例もあり,農業経営の大きな阻害要因となっている.これまでの研究では,イノシシ被害の発生要因は解明されてきているが,被害発生地点の周辺環境特性の解明は十分なされていない.さらに,現在行われているイノシシの被害対策では,農地を一律に扱っているが,土地利用を考慮して分析している例は少ない.そこで本研究では,被害地点の農地を水田と畑地に大別し,それぞれの被害地点の周辺環境特性を明らかにすることを目的とした.
分析には,栃木県茂木町が実施した2007年度イノシシ被害調査による494件のGISデータを使用した.土地利用を水田と畑地に大別し,被害地点と同数のランダムデータを発生させ,林縁や河川からの距離,被害地点後背の森林面積等,被害地点の環境特性を示す変数を説明変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.
この結果,水田における被害地点は林縁からの距離と自然河川からの距離,その一方で畑地における被害地点は耕作放棄地からの距離と建物からの距離,後背森林面積がそれぞれ主要な環境要因として選択された.本研究により,被害地点の環境特性は水田と畑地によって異なることが示唆され,イノシシによる被害対策には土地利用と周辺環境を同時に考慮した対策を見出す必要性があることが示された.