| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-253
アカネズミ(Apodemus speciosus)とヒメネズミ(A.argenteus)は森林帯の多くの場所において同所的に生息しているため、生息環境の嗜好性や生息状況については多数報告されてきた。しかし、両種の遺伝的多様性と生息環境、特に林相との関係については報告されていない。本研究では両種が同所的に生息する愛知県弥勒山において、異なる林相間で両種の個体数及び遺伝的多様性について比較し、それらに寄与する植生要因について検討した。
春日井市東部丘陵に位置する弥勒山(北緯35度18分、東経137度3分、標高281-331m)に、照葉樹林区、落葉広葉樹林区、ヒノキ人工林区の3区(各区に3コドラート12×12m)設置した。捕獲調査は、2008年6〜12月の間、毎月一回三連夜、記号放逐法で行った。遺伝的多様性は、ミトコンドリアDNAのD-loop遺伝子領域のDNA多型を指標とした。
アカネズミは全区で合計21ハプロタイプ、36個体が確認され、落葉広葉樹林区(12ハプロタイプ、15個体)、人工林区(9ハプロタイプ、11個体)、照葉樹林区(6ハプロタイプ、10個体)の順に高くなった。ヒメネズミは全区で合計7ハプロタイプ、34個体が確認され、人工林区(7ハプロタイプ、14個体)、落葉広葉樹林区(4ハプロタイプ、14個体)、照葉樹林区(2ハプロタイプ、6個体)の順に高くなった。また、両種ともに全体及び林相別に比較しても、捕獲個体数及びハプロタイプ数に、雌雄の差は認められなかった。
落葉広葉樹林区でアカネズミの捕獲個体数、ハプロタイプ数共に高くなった理由としては、堅果樹種本数が最も多く餌条件がよいためだと考えられる。また、反対に人工林ではヒメネズミの捕獲個体数、ハプロタイプ数共に高くなった。