| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-257

シカ密度と農業被害程度の関係の経年変化とその要因

*岸本康誉(兵庫県森林動物研究セ),藤木大介,坂田宏志(兵庫県立大)

全国各地で、ニホンジカによる農業被害の問題が深刻化している。農業被害の軽減を目的にニホンジカの個体数を調整するためには、ニホンジカの生息密度と農業被害の程度との関係性を解明する必要がある。また、その関係性は集落周辺の環境変化に応じて経年変化する可能性があることから、被害軽減のためのより効果的な密度調整と被害防除を行うには、関係性の経年変化とそれらの関係性に影響する要因を解明することが重要である。

本研究では、2004年から2008年までの5年分の狩猟者による1日あたりの平均シカ目撃数である目撃効率データと、農業集落(4195集落)を単位として集落の世話人である農会長へのアンケートからえた農業被害程度データを用いて、シカ密度と農業被害程度との関係性の経年変化を解析した。また、目撃効率に加え、各集落における金網柵の設置率などの被害防除の程度や各集落における林縁長や集落周辺の堅果類の豊凶などの環境要因データを加えることにより、農業の被害程度に影響する要因について、階層ベイズモデルにより解析した。各パラメータの事後分布は、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて、多数のランダムサンプリングを得ることにより推定した。

解析の結果、シカ密度と農業被害程度との間には、正の相関関係が認められ、その相関は2004年以降、経年的に弱くなった。これは、柵の設置が進むことにより被害程度が徐々に減少したためであると考えられる。また、集落における金網柵の設置率と農業被害程度との間には、負の相関関係が認められ、2006年から2008年にかけて、その相関は弱くなった。これらの結果は、防護柵の劣化により、防除の機能が低下しているためであると考えられる。


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