| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-274
メスは生産する子の数があらかじめ決まっているため、自身の適応度を増やすには、なるべく質の高いオスと配偶した方がよいと考えられる。したがって、これまでメスの配偶者選択には適応的な意味合いがあると一般に考えられてきた。しかし近年、メスはオスにだまされ、オスを選ばされている場合があることが報告された。これは情報搾取仮説と呼ばれ、オスはメスの元々の性質(たとえば餌の好み、対捕食者行動など)を利用してメスにアピールすることで、自身に有利な(メスには有利でない)形質を進化させるという。これらの報告は主として無脊椎動物や魚などにおいて得られているが、行動生態学のモデル生物である鳥類においての報告はほとんどなく、したがって、情報搾取仮説が生物の進化においてどれほど一般的なのかはまだよく分かっていない。しかしながら、鳥類においては、昔からオスの求愛行動が雛の行動と酷似することがしばしば報告されている。もしオスが雛の行動を真似することでメスを操作しているのならば、情報搾取仮説は現在知られている以上に一般的であるといえるだろう。ただし、残念なことに、オスの雛様行動は多くの場合、羽の震わせ等の行動的要素を伴うために、実験的検証が難しく、実証研究はまだない。ツバメは一夫一妻の鳥類であり、求愛行動中に雛様行動を行う。本種オスの行う雛様行動は羽の震わせではなく、ジージーという雛様の声である。この声はさえずりとは全く異なる、遙かに単純な声である。本種の雛様行動は音声のみであり、また行動はメスから見えない巣内で行われることから、あらかじめ録音した音声を使って、実験的な検証が可能である。これによって、本種において情報搾取仮説を検証する。