| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-275
ワレカラは海藻上で生活する小型甲殻類であり、一部の種で子供の保護をすることが知られている。子供の保護をするワレカラには子供を母親の身体につかまらせる「つかまらせ型」の種と、母親の周囲に密集させる「はべらせ型」の種に大別される。トゲワレカラ Caprella scauraはこれまで前者の保護型が報告されていたが、私達の調査地では、本種は普段はべらせ型をとり、稀につかまらせ型の保護行動を示すことがわかった。このことから、本種では状況に応じて保護形態が変わる可能性がある。本研究では、つかまらせ型は、母親が子供の捕食を回避する場合や、波浪等により海藻が揺れて子供が流される危険が高い場合におこなわれるのではないかと仮説を立て、室内実験による検証を試みた。
私達は2009年11月に北海道南部、臼尻の岩礁潮間帯でトゲワレカラを採集し、止水条件下で個別に飼育した。子供が産まれた後、1個体もしくは3個体のオスを、親子を入れた容器に投入し、親子の行動を30分間観察した(遭遇実験)。オスは他の実験により子供の捕食者として確認されている。また、親子を入れた容器を1分間撹拌し、その後の親子の行動を30分間観察した(撹拌実験)。実験前の保護形態は、ほとんどがはべらせ型だった。遭遇実験の結果、母親はオスに対して攻撃行動を示したが、保護形態に変化はなかった。撹拌実験では、子供が母親によじ登る行動が観察された。よじ登った子供の個体数は母親のサイズや子供の総個体数、出産後経過日数とは関係がなかった。また、母親が子供を拾い上げて自分の身体に乗せる行動は観察されなかった。発表ではこれらの結果に加えて、野外調査の結果を紹介し、他の要因の影響についても議論する。