| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-277

疑ベイツ擬態はどのようなときに生じるのか?鳥類捕食者を使った検証

*本間 淳(京大・理・動物行動), Johanna Mappes(University of Jyvaskyla)

擬態を研究する際に捕食者による学習・忘却過程を考慮することの重要性が指摘されて久しいが、心理学において得られた動物の学習・忘却の過程に関する知見を取り入れた擬態理論(Speed 1993)は、本来ミュラー型擬態になると予測される条件で、寄生的な関係が生じる(疑ベイツquasi-Batesian)との予測を導くため、新たな論争を引き起こしている。発表者らは、以前の研究においてこの「心理学モデル」に最適採餌を導入したシミュレーションモデルを作成した。その結果、a)代替餌の存在を無視していたこと、そしてb)「捕食圧一定」を暗黙の内に仮定していたこと、の2つがミミックがモデル種の被食リスクを増大させる効果を過大評価する原因となっていることが明らかとなった。そして、この2つの要因を取り除くと、ミュラー型擬態は常に相利的であり疑ベイツは生じないと予測された。

今回発表者は、ヒヨコをモデル捕食者として用いてこの予測の検証を行った。被食者は人工餌を処理することにより作成した。モデル、ミミック、代替餌は4%、1%クロロキニーネ溶液と蒸留水にそれぞれ1時間浸して乾燥させた後、モデルとミミックは赤色の、代替餌は緑色の食用色素で染色した。

代替餌の影響に関する実験では、代替餌が十分にある場合とかなり少ない場合に、モデルの被食リスクが、ミミックがいない場合(コントロール)にくらべてどのように変化するのかを調べた。「捕食圧一定」処理の影響に関する実験では、(1)ミミックを増やした分だけモデルを減らす(捕食圧一定)処理、(2)モデルの数は減らさずにミミックを同数加える処理、(3)モデルは(1)と同数に減らし、残ったモデルと同数のミミックを加える処理、においてモデルの被食リスクをコントロールと比較した。


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