| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-282

トゲゴミグモの網構造と採餌効率の関係

*近藤昇平(琉球大・農),辻和希(琉球大・農),立田晴記(琉球大・農)

円網種と呼ばれるクモのグループでは、空腹状態や周囲の餌量、風の強さなどに応じて網の構造を変化させることが知られている。本研究では沖縄本島に広く生息するトゲゴミグモCyclosa mulmeinensisにおいて、本種の特徴である網角度の多様性、ゴミから成る隠れ帯形成に伴う切れ網構造に焦点を当て、網構造の特徴を詳細に解析すると共に、網構造の相違が採餌効率に与える影響を調査した。

野外にて、トゲゴミグモのメス成体の網構造と餌メニューを調査したところ、地面に対する網の角度は0〜30度と60〜90度に分布が集中する二山分布を示した。そこで0〜30度の網を水平網、60〜90度の網を垂直網とし、さらに切れ網構造の有無により、水平通常網、水平切れ網、垂直通常網、垂直切れ網の4つの網タイプに分類した。これらの構造を詳細に調査したところ、水平、垂直の切れ網はそれぞれの通常網よりも網上部の半径、横糸の本数ともに有意に小さく、網下部の面積が相対的に大きくなっていた。また、垂直通常網は水平通常網より有意に網面積が大きく、切れ網は通常網よりも網目が細かった。次に餌がトラップされている網数を数えたところ、全調査数に対する餌がトラップされている網数の割合が網タイプ間で有意に異なり、垂直通常網で餌がトラップされている割合が最も多かった。

切れ網構造で網目が細かく、網下部の面積が大きい理由として、切れ網による採餌効率の低下を、網密度を高めることで補っている可能性が考えられる。垂直通常網が最も餌トラップしやすかった点については網面積が大きいことに加え、隠れ帯がないことによる網の発見率の低下が考えられる。ゴミでできた隠れ帯には捕食回避の効果があると考えられており、隠れ帯があることによって採餌効率が低下するとしても、個体の生存率を上昇させることで長期的利益を獲得している可能性がある。


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