| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-289

水田周辺の環境が鳥類の出現に及ぼす影響

*高橋藍子,(京都学園大・バイオ環境)

水田は、人間が稲作を行う耕作地であるとともに、鳥類を含む多くの生き物の生息場所として重要な役割を果たしている。本研究では、京都府内最大の農地を有する亀岡市の水田において、鳥類の出現傾向と水田周辺の環境が及ぼす影響について検討した。調査は、2009年10月から12月にかけて、京都府亀岡市において、今なお大規模な圃場整備が行われていない水田地帯3カ所(以後、調査地A)と、近年大規模な圃場整備が行われた水田地帯3カ所(以後、調査地B)について、各4回、約2kmのルートセンサスを行った。

全調査で21科39種を記録した。出現個体数が100以上の種は、セキレイ類を除き、群れで活動する種であった。また各調査地の出現個体数上位3種(n=2470)は、スズメ(37.2%)、ホオジロ(8.6%)、カワラヒワ(8.1%)と群れで活動する種で占められた。

調査地Aと調査地Bの出現種数と出現個体数を中央値で比較すると、調査地Aでは12種、58.5個体、調査地Bは15種、104.5個体と、調査地Aに比べ調査地Bの方が出現種数、個体数ともに多いことが認められた。これは、調査地Bには川幅の大きな河川があり、水鳥が多く出現したこと(サギ類調査地A=3個体、調査地B=67個体)、カラスが塒に利用する竹林が付近にあることが影響すると考えられる(調査地A=31個体、調査地B=212個体)。

また、A内3か所、B内3か所で各上位3種をみると、A1~A3ではスズメ、カワラヒワが、B1~B3では、スズメ、ヒバリが共通する上位種であったが、それ以外の種は異なるものであった。このことから、A内の3か所、B内の3か所でも、鳥類の出現傾向は差異があると考えられる。

以上のことを踏まえ、圃場整備の有無だけでなく、各調査地の水田及びその周辺の環境に着目し、それらが鳥類の出現に及ぼす影響について議論する。


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