| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-296

ニホンツキノワグマの採食・移動・休息時間の評価手法

*有本勲(農工大・連合農学),後藤優介(立山カルデラ砂防博物館),永井知佳,古林賢恒(ライチョウ保護研究会),梶光一(農工大)

動物が採食,移動,社会行動,休息など様々な行動に割り振る時間(Time budget)は,彼らの生存や繁殖に大きく影響する.例えば霊長類では直接観察によりTime budgetは,利用する食物や齢・性によって異なることが報告されている.しかし,ツキノワグマは森林性であり直接観察が困難であることから情報が乏しい.近年,活動量センサ付きのGPS首輪が普及し,クマの位置情報と活動状態についてのより詳細なデータが取得可能になってきた.そこで, GPS首輪を用いてクマの採食・移動・休息時間の評価を試みた.

富山県の立山カルデラ周辺地域にて2頭のツキノワグマに活動量センサ付きGPS首輪(Lotek3300)を装着した.GPS測位間隔は最短の5分間に設定し,2004年10月16日〜10月31日(メス)および2005年9月16日〜9月21日(オス)のデータを取得した.活動量センサは5分間に首輪が揺れた回数(以下act値)を記録する. Time budgetの区分は,まずact値からクマの活動と休息を区分する基準(Kozakai et al. 2008)に則り,act値≦13のGPS測位点を“休息”とした.クマの秋の主な食物は木本性果実であり,それらを採食するためにクマ棚を形成することから,採食の際には1地点に長時間滞在すると考えられる.そこで活動(act値≧14)をクマの移動距離と移動角度の変化から“採食”(活動中の滞在)と“移動”に区分した.以上から,採食・移動・休息の割合を求めた.また,GPSの測位間隔がTime budgetの評価に与える影響を検討するために,5分間隔のGPSデータをもとに測位間隔を擬似的に長くした場合の変化を調べた.


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