| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-297

種内コミュニケーションに音声を利用しないマダスカルのトカゲ類2種による鳥類警戒声の盗聴

*伊藤亮(京大・動物行動),森哲(京大・動物行動)

動物の中には、他種の警戒声を盗み聞きして、自分の防衛に利用する種が存在する。他種の警戒声を盗用する動物の研究は、種内で音声コミュニケーションを頻繁に用いる哺乳類や鳥類を中心に行われている。一般に、トカゲ類は種内コミュニケーションのほとんどを視覚や嗅覚に依存しているにも関わらず、聴覚が発達していることが多い。そこで、種内で音声コミュニケーションを全く行わないイグアナ科に属するキュビエブキオトカゲが、共通の捕食者を持つ鳥の警戒声を聞き分けているか否かを検証した。実験では、ブキオトカゲに対し、録音したマダガスカルサンコウチョウの「さえずり」及び、猛禽類に対する「警戒声」を再生し、ブキオトカゲの各音に対する反応を比較した。その結果、ブキオトカゲは、「さえずり」より「警戒声」に対して、より警戒行動をとることが示された。ブキオトカゲが他種警戒声盗聴を行い、実際に遭遇する前に捕食者を認知することで、被食の危険性を下げている可能性が示された。更に、カタトカゲ科に属するヒラオオビトカゲの鳥類警戒声への反応を調べた。実験では、オビトカゲに餌を与え、採餌中のオビトカゲに対して、ブキオトカゲと同様にサンコウチョウの「さえずり」と「警戒声」を再生し、採餌を中断する時間を比較した。その結果、オビトカゲは、「さえずり」よりも「警戒声」に対して、より長い時間採餌を中断することが示された。オビトカゲも、採餌を中断して鳥類警戒声を盗聴することで、被食の危険性を下げている可能性が示された。これらの結果から、種内で音声コミュニケーションを行わないにも関わらず、盗聴はトカゲ類に広く見られる行動であることが示唆される。


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