| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-303
社会的一夫一妻性の動物では、夫や妻とは別の相手と交尾して子孫を残す繁殖戦術が知られている。雄は、妻以外との子を多く残すことによって適応度が高まるため、浮気を積極的に求めると予想される一方で、妻のメートガードを怠ると、妻に浮気をされて逆に父性を失う適応的コストも予想される。また、集団繁殖する動物の場合、繁殖戦略はつがい間の都合だけでは決まらず、繁殖集団に属する他個体の影響も受ける事が想定されるため、雄のガード/浮気戦略は「自身・妻・集団」の三者間の複雑な関係を考慮する必要がある。
近年、野生動物集団の父性鑑定が盛んに行われるようになったが、集団間で浮気率(集団が生産した全子に対するつがい外子の割合)が異なることや、浮気率に年変動が生じるという報告がされている。今回我々は、これらの変異は天候や気温といった気象要因に起因するのではないかと考えた。実際、集団のつがい外父性が雨量や気温によって変動するということがいくつかの鳥種で報告されているが、気象条件が行動面にいかなる影響を与えるかについては具体的に示されていない。本研究では、集団繁殖するツバメを対象に、気象要因が三者の行動に与える影響と、最終的に雄の戦略に与える影響を調査した。
その結果、雨や低気温による気象条件の悪化に伴い、雄はコロニーの滞在時間を増やし、妻に対するさえずりなどのアピールを活発化させた。同時に、他雄がガード圏内へ侵入する頻度も増え、雄のガード努力に影響を及ぼしていることがわかった。つまり、天候が荒れると雄のメートガードの活動内容が大きく変わった。これらの結果は、先行研究で得られた気象条件とつがい外父性の間の相関関係が表れるメカニズムを説明するものであると同時に、雄のガード/浮気の努力配分の決定に、気象条件が重大な影響を与えることを示すものである。