| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-306

キビタキの渡来における理想専制分布

*岡久 雄二(農工大),森本 元(立教大),高木 憲太郎(バードリサーチ),大久 保香苗(東農大)

理想専制分布理論 (ideal despotic distribution)とは縄張り性の生物において個体が生息場所を自由に行き来できず、他の個体の存在により行動が制約されるために劣位な個体が不適な生息場所へ追いやられるというものである(Fretwell & Lucas 1970)。この理論の元では、渡り鳥はより早く渡来した個体から順により良い環境を獲得し、遅く渡来した個体は質の悪い生息地となるために適応度がより低くなるということが予測される。

本研究では山梨県の富士山原始林において、夏鳥として渡来し繁殖するキビタキを対象に、縄張り形成の早さに影響する環境要因と繁殖成績に影響する環境要因とを比較することで、キビタキの縄張り分布における理想専制分布の検証を試みた。

調査は本種の繁殖期である2009年の4月〜8月に行った。キビタキの行動追跡を行い、行動圏を記録した。環境調査は植生を基準に調査区内の環境を11タイプに分類し、タイプ毎にコドラートを作成し毎木調査を行った。またキビタキの巣のモニタリングにより各巣の推定巣立ち雛数を得た。

キビタキの推定巣立ち雛数は、縄張りの高木の多様度が高い環境ほど多かった。キビタキの渡来日は個体の齢によって異なる傾向が検出された。成鳥は、より早く渡来した個体ほど広葉樹の割合が高くかつ、高木の多様度の高い縄張りを獲得していたが、若鳥は同様の傾向が見られず、渡来の早さと縄張りの環境に関係は検出できなかった。


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