| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-307
タヌキは、フィンランドなどの寒冷地では冬ごもりをすることでエネルギー消費を抑えていることが報告されている。しかし、日本においては冬期に活動度は低下するものの冬ごもりは確認されていない。本研究では、日本の寒冷地においてタヌキがどのようにエネルギー消費を抑えているかについて明らかにするためにラジオテレメトリー法による調査を行なった。
栃木県奥日光地域において、2006年10月から2007年 7月までに延べ 6頭の成獣タヌキ(オスメス 3頭ずつ)の追跡を行なった。調査期間中に 1時間間隔の24時間連続追跡を延べ35回実施し、1日の移動距離と日中の移動距離の割合(6時〜17時に移動した距離/1日の移動距離)を算出した。そして、積雪期(1-3月)の各環境要因(気温と積雪量)と上記移動距離のタヌキ個体内での変動を多重回帰により検討した。気温は、追跡時間帯の平均気温を日光測候所のデータから算出し、積雪量は調査地で測定した。また、24時間追跡データから 1時間ごとのタヌキの移動割合を算出し、これを活動度とした。そして、日中(6:00-17:59)と夜間(18:00-5:59)のタヌキの活動度を積雪期と無雪期(4-7月と10-12月)で比較した。
積雪期におけるタヌキの 1日の移動距離は、気温の低下および積雪量の増加により有意に減少した。また、積雪期には無雪期に比べて日中に移動する割合が多くなった。さらに、積雪期には、1日の平均気温が低い日ほど日中の移動距離の割合が増加した。以上のことから、本地域のタヌキは、冬期(積雪期)には気温の低下や積雪量の増加により移動は制限されるものの、暖かい時間帯により多く活動することでエネルギー消費を最小限に抑えていると考えられる。