| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-309

寄生蜂H.prosopidisにおける宿主探索行動の解析

*阿部真人,嶋田正和(東大院・広域システム)

動物の行動は古くから多くの研究者を魅了してきた。特に哺乳類や鳥類など大脳を持つ脊椎動物だけでなく、無脊椎動物である昆虫でも記憶・学習による複雑な行動を示し、効率良く迅速に環境に適応することができるという点は興味深い。我々はこのような昆虫の行動に注目し、記憶・学習が適応度へ与える影響と、記憶・学習による意思決定が行動にどのように現れるかを考えたい。

先行研究としてコマユバチの一種であるHeterospilus prosopidisが、アズキ内の宿主アズキゾウムシ(C.chinensis)とヨツモンマメゾウムシ(C.maculatus)の幼虫を探索する際、寄生した経験のある方の宿主種に対して選好性を強めるという強化学習をし、limited attention(一方に集中して探索すると他方はおろそかになる注視のトレードオフ)を示すか否かを実験により解明した。その結果、宿主発見が容易な状況においてはlimited attentionを示さなかったが、宿主の密度を低下させ、発育段階を蛹にした宿主発見が困難な状況においてはlimited attentionを示すということが示唆された。

これをふまえた上で、本発表ではH.prosopidisが宿主探索の際にどのような行動パターンを示すかを調べるために1.宿主のない状況、2.宿主はあるが発見が容易な状況(豆内に4齢後期の宿主が1匹)、3.宿主はあるが発見が困難な状況(豆内に蛹の宿主が1匹)に置いたときの行動を、それぞれビデオカメラを用いて動画として録画し、統計ソフトRを用いてその歩行軌跡を解析した。それによりH.prosopidisの宿主探索時に観察される行動パターンの適応的意義と、記憶・学習が行動に与える影響について考察する。


日本生態学会