| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-310

カメフジツボの付着パターンはウミガメ類の回遊行動の差を反映するか?

*林 亮太(千葉大・自然科学), 山口 幸(海洋開発研究機構)

カメフジツボ Chelonibia testudinaria はアカウミガメにもアオウミガメにも付着することが知られている。雑食性のアカウミガメは秋〜冬季の沿岸域での観察例が少なく、繁殖期のみ沿岸に来遊し、繁殖期を終えると外洋に出て行くことが知られている。一方、アオウミガメは草食性であるため周年沿岸域で観察されている。Hayashi & Tsuji (2008)は沖縄本島沿岸で捕獲されるアオウミガメに付着するカメフジツボが集中分布していることを報告し、付着生物からウミガメ類の回遊行動を知る手がかりになると指摘した。しかし、カメフジツボ付着数の決定要因が回遊行動によるものであるかどうか、まだ検証はされていない。

本報告では鹿児島県屋久島で捕獲したアカウミガメ48頭、東京都小笠原母島で捕獲したアオウミガメ47頭について、カメフジツボ付着数を調査し、ウミガメ2種におけるカメフジツボ付着数の頻度分布を作成した。その結果、ウミガメの種によって頻度分布のパターンが異なることが明らかになった。この分布の違いを説明するために、カメフジツボ付着個体数決定要因として考えられる、 1)カメフジツボが出す集合フェロモン、 2)ウミガメの回遊経路という二つの要因それぞれに着目した数理モデルを作成した。その結果、アカウミガメにおける頻度分布は 2)ウミガメの回遊経路モデルで説明でき、アカウミガメが外洋性であることを反映していると考えられた。一方、アオウミガメの場合は、 1)集合フェロモンモデルで説明でき、ウミガメが沿岸域に留まるために、カメフジツボが出す集合フェロモンの影響が強くなったことが示唆された。


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