| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-322
日本に生息するアミメアリ Pristomyrmex punctatus には、女王アリが存在せず、若齢ワーカーが、単為生殖により繁殖する。全てのコロニー個体が単一クローンの個体で構成されるコロニーもある。そのようなコロニーは血縁選択説により、高い包括適応度が得られると考えられる。しかしながら、複数のクローン系統を含んでいる個体群もある。このような複数のクローン系統によるコロニーが形成される原因として、コロニーの融合が考えられる。コロニー融合はコロニー内の血縁度の低下により、直接的利益を減少させてしまう。しかしながら、越冬に適した巣場所が少ない場合、コロニー融合は、越冬を成功させるための戦略の1つとなる。低温条件下では、コロニー融合が生じることが示唆されている。そこで、越冬時に生じる他の要因のひとつとして、生活できる巣場所が他に存在せず、行き場がない状況が考えられる。そこで、異なる地域由来の2つのコロニーを、低密度(500対500個体)または高密度(5000対5000個体)で利用可能な巣場所を1つに限定した実験ケースに入れ、(1)コロニー同士が出会った時の反応が、時間経過によりどう変化するか、また、限られた巣場所を共有するようになるかどうか調べた。(2)利用可能な巣場所を2つに増やした場合に、それぞれのコロニーの移動先の巣場所が、コロニーごとに分かれるのか、両コロニーの個体が混在したまま移動するのかにより、コロニーが融合したのかどうかを調べた。(3)元々所属していたコロニー個体、相手の所属していたコロニー個体、全く別地域のコロニー個体に対する闘争性が、実験前に出会わせた場合と比べて変化があるかについて調べた。これらの実験により、なぜアミメアリに複数クローンのコロニーが存在するのかについて考察する。