| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-042
トドマツは北海道人工林の主要な植栽樹種であるが、多くの林分の収穫時期が迫っている。伐採とその後の更新は、今後の森林の構造を決定づけるものであり、生物多様性保全におけるトドマツ人工林の役割を評価し、適切な管理方法を検討しておく必要がある。そこで、林齢の異なるトドマツ人工林において下層に出現する被子植物を調査し、林齢や林床のササの被度などの影響について検討した。
調査を実施した22林分(4〜76年生)をTWINSPANによって分類したところ、それぞれの植生タイプは林齢、相対散乱光、ササの被度と強く関連していることが示唆された。植栽後の下刈りが実施されている段階では、種数は最も多く、希少な種も出現したが、外来種の割合も高かった。20〜30年生で林冠が閉鎖し、ササの被度、下層植生全体の被度、種数のいずれも低下したが、40〜60年生では種数が比較的多くなった。60年生以上のではササの被度が高く、種数は少なかった。すなわち、林冠の閉鎖とともにササが一度衰退し、林齢とともに再び回復する場合が多く、下層植生の種数もこれに対応して増減していると考えられた。最近間伐された林分や、間伐時の集材路の跡が残る林分では、相対散乱光強度が比較的高かった。地表の攪乱を受けた集材路跡には他の部分とは異なる種が多く生育していた。
トドマツ人工林は、下刈りなどの攪乱を必要とする種、間伐などによる適度な光環境や地表の攪乱を必要とする種、閉鎖した林内で競争する植物が少ない環境を必要とする種など、多様な種の生息地として機能しているといえる。このような機能を持続させるには、トドマツの肥大成長や下層植生の発達を促す強度間伐林分や、比較的暗い環境を創出する弱度の間伐など、多様な施業を実施することが望まれる。