| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-045

オオルリシジミの生息地における牧野管理が草原性チョウ相に及ぼす影響

*村田浩平(東海大・農),松浦朝奈(東海大・農)

絶滅危惧種であるオオルリシジミの生息する阿蘇地域の草原は,野焼きと放牧が継続されている自然草地が多い.しかしながら,これら牧野管理は,生態系に大きな影響を及ぼすことが指摘されており,本研究では,本種の生息する阿蘇地域の草原におけるチョウ相を解明するとともに,オオルリシジミを保護しつつその他のチョウへの影響をできるだけ与えない牧野管理とは何かを明らかにすることを目的として,慣行的な放牧圧である草原と, 高い放牧圧の草原, 慣行的な放牧圧よりやや低い放牧圧である草原,休牧中の草原についてチョウ相を調査し,次のような結果を得た. (1) 阿蘇地域の草原において調査期間中に確認されたチョウは,8科64種であり,中でもタテハチョウ科(19種)とシジミチョウ科(13種)の種数が多かった.(2) これらのチョウの発生の山は5月に見られたが,放牧圧が高いと発生の山は明瞭でなくなることが示唆された.(3)オオルリシジミを含む13種の希少なチョウの生息が確認された.(4)草原性チョウ類の優占種は,ツマグロヒョウモン,ウラギンヒョウモン,モンキチョウ,ジャノメチョウ,ベニシジミ,オオチャバネセセリであった.(5)森林性チョウ類の優占種は,ルリシジミ,ヒメウラナミジャノメ,キチョウ,ヤマキマダラヒカゲ,クロシジミ,オオウラギンスジヒョウモンであった.これらの結果から, 阿蘇地域において本種を保護するために最適な牧野管理は, 同地域における慣行的な放牧圧の下毎年,春に野焼きが実施されている草原であることが示唆された.また,近年,開発などにより生息地周辺環境に変化が見られる.また,観光との両立など難題もあり,本種をとりまく状況についても報告する.


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