| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-048
絶滅危惧植物であるサギソウは乱獲による個体群の縮小がその減少要因だとされている.三河地方に点在する湿地には多くのサギソウ群落が残されており,様々なサイズの個体群が存在している.そこで,乱獲による個体数の減少がこの種の減少要因だとすれば,個体群によって,様々な繁殖生態学的なファクターの違いがあるはずである.そこで,環境が類似した様々な個体数からなる個体群を抽出し,開花時期,開花数,種子結実率,種子数を観察することによって,個体数の増減がどのような影響を繁殖ファクターに及ぼすのかについて検証した.10個体,50個体,100個体からなる個体群,およそ5集団について,一週間ごとに開花の有無を確認,開花時期を特定した後,結実後に果実を採集し,種子数をカウントした.
その結果,個体群の大きさは結実率にはそれほど大きな影響を及ぼしていないことがわかった.結実率は20%から70%ほどの幅があるものの,個体群によって,傾向があるわけではなく,開花時期の天候に左右されている傾向が示された.サギソウの花粉媒介昆虫はスズメガなどであるとされているが,今回の観察することはできなかった.しかし,長距離飛行する蛾などによる花粉媒介は,サギソウの個体数がある程度確保されていれば種子結実も可能であると言うことを示唆していた.