| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-052

千葉市におけるニホンリス避難場所としてのゴルフ場の評価

*松山奈央(東京農工大・院・農), 梶光一(東京農工大・農)

千葉市の森林は、江戸時代から伐採および薪炭林として利用されてきた。戦後、大規模開発で森林が大幅に減少したほか、マツ枯れや薪炭林の管理放棄が起こり、樹上棲でマツ球果を主要な餌資源とするニホンリスの生息地が悪化している。ゴルフ場の出現は分布域の分断や生息地の縮小をもたらせた負の側面がある一方、比較的まとまったマツ林を維持しているため、現状では管理放棄された落葉広葉樹林と比べて相対的に、リスの生息に正の効果があると考えられる。そこで、ゴルフ場はリスの避難場所として機能するかについて、リスの利用状況から評価した。

調査はリスが多様な餌資源を利用するとされる3〜5月に実施し、首輪型発信機を装着したリスを追跡し、位置の特定と直接観察に努め、営巣木と採食物を観察した。生息地選択の解析ではManlyら(2002)の手法を用い、利用可能量を各植生タイプの面積割合、利用量を各個体の測位点とした。

その結果、95%MCP(樹林地面積)はそれぞれ、M1:19.4ha(7.3ha)、F1:15.6ha(6.7ha)、F2:10.5ha(5.4ha)で、行動圏内の樹林地面積は小さかった。生息地選択の解析からは、マツ林およびスギ林の選択的利用と、非樹林地および竹林の忌避が認められた。

営巣木は13巣36例を特定し、リスは主にゴルフ場内のスギやアカマツなどの常緑針葉樹を利用した。隣接林の多くは落葉広葉樹であり、子育て期のメスに利用された。

採食物は20種317例を確認した(菌類3種、木本類15種、草本類2種)。マツ球果の占める割合が81%と高く、他に液果や花、芽、菌類など、季節に応じた資源を利用した。

以上の結果に基づき、森林減少や林内荒廃が著しい都市近郊に生息するリスの保全について、ゴルフ場と隣接林の今後の在り方から考察を行なう。


日本生態学会