| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-055
コガタブチサンショウウオHynobius yatsuiは岐阜県以西の山地に生息する日本固有の小型有尾類で、環境省(2000)および大阪府(2002)版レッドデータブックでは、ともに準絶滅危惧種に指定されている。しかし、近畿地方における本種の分布については断片的な記録があるのみで、生活史もほとんど知られていない。一般に両生類の多くの種は分散能力が限られており、本種に関しても森林伐採などの生息地の人為的な改変により個体数が減少している可能性が考えられる。そこで本研究では、本種の保全に関する基礎資料を得ることを目的とし、2008年3月〜2009年6月に大阪府内の分布状況および遺伝的多様性を調査した。分布調査は、大阪府内で過去に本種の生息記録がある和泉山脈、金剛・生駒山脈を中心に、採集記録のある河川とその周辺河川の源流部計29カ所で行った。野外調査で発見した個体からDNAを抽出し、ミトコンドリアDNAのCyt b遺伝子の一部(1,140bp)を用いて遺伝子解析を行った。分布調査の結果、過去の生息記録がある地点も含めた計17ヵ所から合計55個体の本種が確認された。過去に採集記録のある地点では、泉佐野市の犬鳴川流域を除く5ヵ所で再確認され、12ヵ所で新たに生息を確認した。遺伝子解析の結果、塩基配列が決定できた52個体から24ハプロタイプが確認され、牛滝川(岸和田市)と父鬼川(和泉市)の間を境にして、それより西側と東側にそれぞれ固有のハプロタイプが確認された。