| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-068

農村の生物多様性管理〜行政研究機関はいかに取り組むべきか〜

*村上裕(愛媛中局産振課),畑中満政(愛媛衛環研),好岡江里子(愛媛衛環研)

里地里山の水田における生物多様性保全を標榜した調査研究を、都道府県レベルの試験研究機関が実施するうえでの課題点を整理した。まず、里地里山の景観要素には複数の管轄機関が存在しており、水田周辺においても管轄の違いが生じていることが明らかになった。次に環境保全型農業と生物多様性保全型農業では直接的な受益者が異なることから、生物多様性保全を目標とした課題設定は現状の農業試験場の体制では困難であることが多いことが明らかになった。また、2001年の土地改良法の改正以降、水田の持つ多面的機能を重視した事業展開を実施している農業土木分野であるが、水田内部は個人の所有物という観点から事業の対象外となることが多く、水棲動物で重要性が指摘される水系の連続性は水田内部の水環境如何に左右されるという問題点が明らかになった。水田の生産性と生物多様性保全を両立させた試験課題を設定する場合、1.営農活動に支障がないこと、2.低コストであること、3.生産者に何らかのメリットがあること、4.汎用性が高いこと等の条件をクリアしていかなければならないが、生物多様性の利益の享受者は生産者に限定されない公益的な利益という観点から、従来の縦割り構造から脱却した多方面からの支援も必要である。


日本生態学会