| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-072

カラ類の営巣場所選択に関するエゾシカの影響

*齊藤隆(北大FSC),油田照秋(北大環境科学院),日野貴文(北大環境科学院),揚妻直樹(北大FSC),日浦勉(北大FSC)

シカ類は森林生態系などに劇的な変化をもたらす生態系エンジニアとして知られており,草本,木本植物への直接的な撹乱(採食,踏圧)ばかりでなく,植物に依存する他の生物への間接的な影響も注目されている.鳥類については,シカの多い地域では低木,草本に営巣する種が少なくなる一方,樹洞営巣性の種は増加するという報告があるが,シカによる林床植物の撹乱が樹洞営巣性鳥類すべてに正の効果を持つとは考えにくい.そこで本研究では,シカによる林床植物の撹乱が樹洞営巣性鳥類に与える影響を明らかにするために野外実験を行った.北海道大学苫小牧研究林内に設置した約15 haの囲い地にシカを解放して,高密度区とした.高密度区とその周辺の対照区にカラ類を対象にした巣箱150個(高密度区:59個,対照区:91個)を設置し,2009年5月から8月まで,営巣した鳥類の種と営巣場所などを記録し,営巣場所選択を分析した.巣箱には,23番いのシジュウカラと合計6番いのヤマガラ,ヒガラ,ハシブトガラ,ゴジュウカラが営巣した.シジュウカラ以外はサンプル数が少ないので「その他」としてデータをプールして分析した.シジュウカラは高密度区に4番い,対照区に19番いが営巣し,高密度区に対してManly の選択指数(w)が有意に1を下回る忌避性を示した(w = 0.442).また,「その他」は高密度区に5番い,対照区に1番いが営巣し,対照区を有意に忌避していた(w = 0.275).高密度区の林床植生は被度が低く,営巣場所を選択する春先に地上で採餌することが多いシジュウカラとって繁殖場所としての価値が低いのではないかと考えられ,「その他」はシジュウカラが多い対照区を避けているのではないかと考えられた.


日本生態学会