| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-073
二次草地は高い植物多様性を有するが,近年の管理変化に起因し,二次草地における植物多様性の減少は著しい。欧州では,多様性の低下した二次草地で目標植物種群の導入による植生復元を実施してきた。一方,日本の場合,植生管理再開を通した植物相復元の事例は多いが,植物種導入の検討は不十分である。
日本の二次草地で植生復元を図る場合,日本の草地をとりまく特徴を理解し,適した手法を探る必要がある。たとえば,日本の二次草地は二次林との関連が深い立地である点で,欧州のそれとは異なる。草地が管理停止されると木本種が速やかに侵入する場合が多いし,二次林の伐採直後や明るい二次林林床は草原生植物の生育地となる。また,個々の植生管理単位は欧州より小規模であるため,周辺環境が二次草地の植生に及ぼす影響はより大きいかもしれない。
本発表では,まず,欧州の草地で盛んな表土撒きだし,土壌構造保持した表土移植,市販または現地採取した種子の混播,種子を含む地上植生刈り取り残渣の撒きだしなどの知見をまとめた。つぎに,日本では適用例が少ない刈り取り残渣撒きだしによる植生復元の有効性を検討すべく,明るい二次林下で刈り取った残渣の撒きだし実験を行い,同一地の表土撒きだし実験により発芽した埋土種子由来の個体の種構成と比較した。
08年11月1日に10m2の区画10箇所で刈り取った植物体を翌3月に関東ロームの心土に撒きだしたところ,刈り取り時に開花・結実していた種のほとんどの発芽が確認された。対象地はシバ草地に囲まれており,耕地雑草の発芽も確認されたが,その密度は低かった。表土から発芽した個体にも地上植生で開花・結実した種が含まれたが,その密度は低い場合が多かった。表土から発芽した個体には,地上植生にはない草原生種も含まれていた。地上に開花した種を多個体復元するには,表土より刈り取り残渣を利用することが適当であると考えられた。