| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-074

保全・生態情報を用いたバッタ目昆虫の絶滅リスク評価

*井村 治(畜草研), 市川顕彦(日本直翅類学会)

近年草地に生息している生物種の多様性が脅かされて、その保全への取り組みが課題となっている。草地の代表的な昆虫であるバッタ目のレッドリストと生態情報を分析して、バッタ目昆虫の保全状況を明らかにするとともに保全すべき種の特性を評価した。レッドリスト情報は都道府県版レッドリスト、また生態情報は文献より収集し、各種のレッドリストカテゴリー、生息環境,分布範囲および年世代数のデータベースを作成して分析に用いた。日本産バッタ目405種のうち、49%の種は森林性、39%が草地性で、草地と森林両方を生息地とする種が4%あった。全種のうち、56%の種が何れかの都道府県のレッドリストに掲載されていた。都道府県版レッドリストに掲載される種の割合(RL種率)では、種数の少ないクツワムシ科、ヒラタツユムシ科、アリツカコオロギ科、ケラ科(100%掲載)を除くと、クロギリス科、コロギス科、コオロギ科およびマツムシ科のRL種率が高かった。洞窟性と並んで草地性の種は有意にRL種率が高かった。井村(2008)の種ごとの絶滅リスク指数(ERI)*で見ると、カマドウマ科、ササキリモドキ科、カネタタキ科の絶滅のリスクが平均して高かった。生息環境別で見ると、草地性の種は洞窟性や森林性の種に比べてERIの平均は有意に低く、現状では草地性の種の保全状況が他の生息環境と比較して悪いとは見られなかった。一般化線型モデルを用いて絶滅リスクの高い種の生態的特性を予測した結果、分布範囲が狭くまた年世代数が少ないほどERIが高く、これらの特性を持つバッタ目の種は保全上注意すべき種であると結論された。* ERI=(絶滅(EX)県の面積×5+絶滅危惧1類(EN)県の面積×4+絶滅危惧2類(VU)県の面積×3+準絶滅危惧(NT)県の面積×2+情報不足(DD)県の面積×1+要注目種(N)県の面積× 0.5)÷分布範囲面積.


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