| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-096
スキー場では,滑走斜面を維持するため,年1回程度の草刈りを実施することで森林への遷移を抑制している.このため,スキー場は,経済活動に組み込まれた形で大面積の半自然草原を保全する場として利用可能と考えられる.しかし一方で,滑走目的に応じた大規模な地形改変が行われることも多い.そうした場所では,外来牧草による緑化が行われ,本来の半自然草原は破壊され劣化している.植生が劣化したスキー場では,まず草原の再生が必要となる.草原再生にあたっては当該スキー場とその周辺に再生のソースを求める必要があるが,大規模な土地改変をうけたスキー場では,再生のソースとするべき多様な草原生植物が残存しているかどうかなどは明らかでない.そこで,大部分が地形改変を受けたスキー場において夏季および秋季の植物相調査を実施し,ゲレンデ内の草原生植物の分布傾向を整理した.
調査対象は,兵庫県北部のミカタスノーパーク(標高500-700m)とし,2009年8月と9月に調査をおこなった.
現地踏査によって,ゲレンデはほぼ全域が土地改変を受けていることがわかった.土地改変を受けた場所は,(1)ススキ優占部分と(2)外来牧草優占部分に区分できた.また,立ち木の周辺などには(3)土地改変を免れた部分が局所的に存在していた.(1)〜(3)のいずれの場所においても,約100〜140種の植物が確認され,この中には在来の草原生植物が多く含まれていた.とくに希少な草原生植物として,サルマメ,カキラン,ヒオウギなどが確認された.これらは局所的な非改変区域に集中して分布していた.立木があるなどの理由で土地改変をまぬがれた場所では,草原再生の重要なソースが得られる可能性が示唆された.