| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-100
温暖湿潤で常緑広葉樹林が広く残存する伊豆諸島には、維管束着生植物が多数生育している。しかし、主に樹上に生育する着生植物は確認が難しく、生育状況は十分に明らかになっていない。本研究では、伊豆諸島の希少維管束着生植物の生育状況を明らかにすることと、これらの保全について考察することを目的とする。解析には、大島、新島、式根島、三宅島、御蔵島、八丈島において演者らが2007年以降に行った維管束着生植物の調査結果を用いた。対象種は環境省(2007)で絶滅危惧種とされているものを中心とした。分布データは環境庁3次メッシュごとの分布の有無として整理した。その結果、絶滅危惧種として、マツバラン、アツイタ、ヒロハアツイタ、オオタニワタリ、マメヅタラン、オサラン、ムギラン、フウラン、ナゴランの情報を得ることができた。これら絶滅危惧種の種数は、大島1種、新島5種、式根島1種、三宅島1種、御蔵島8種、八丈島6種と、島間で大きく異なった。また、種ごとの確認メッシュ数についても島間で大きく異なるものがあった。マメヅタランを例とすると、確認されたのは、新島と御蔵島の2島で、新島が1メッシュであったのに対して、御蔵島は14メッシュで確認された。以上のように希少着生植物の豊富さには、島間で顕著な差があり、伊豆諸島全体だけでなく島ごとの保全対策が必要と考えられる。一方、まだデータが得られていない島があること、データ未整理なためリストアップできなかった種があるなどの問題点がある。今後も調査を進め、より正確な分布を把握したいと考えている。